千葉県印西市で、責任世代の人が野のへらぶな釣りを通じて心を整え、自信を取り戻す応援をしています

野のへらぶな釣りは想像力を働かせて臨機応変に対応するもの

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この記事は、春先に野のへらぶな釣りをしたへら師(私)の1日の体験談と、釣行の時間を通して何を考えどんな行動をしているかを記したものです。

「釣り人って、釣りをしながら何を考えているんだろう?」と疑問を持っている方は、ただぼーっとウキを眺めているだけじゃないんだ。と分かって頂けるかも。

目次

私の近所のへらぶな乗っ込み現場へ

2024年3月下旬、この時期は例年、私の自宅近所の川を、へらぶな達が上流の浅場に遡上し、産卵を行う通称「乗っ込み」の時期です。

産卵期のへらぶな

私を含め、この釣り場に通うへら師達は、毎年この季節になると、ワクワクが抑えきれません。

というのも、乗っ込みの期間には、普段は警戒心の強く、釣り人に近い場所には近づかないはずのへらぶな達の警戒心が薄れます。

そして、卵を抱えてお腹が大きくなったメスのへらぶな1匹を追いかけるように、数匹のオスのへらぶな達がグループになって、川岸に近い、水深の浅い場所に集結するため、短い竿で大型のへらぶなを数多く釣ることが出来る絶好の機会なのです。

へらぶなのメスは、川岸近くの浅い場所に生える水草や枯れた葦などに、尾びれを叩きつけて産卵するため、釣り人の間では、この様子を「ハタキ」と呼んでいます。

例年ハタキがある場所に通っている常連のへら師達は、3月下旬、水田に水を引くために川の本流の水門が開き、支流の川の水位が上がってくる状況や、気温、水温の状況から、凡そこの日当たりにハタキがあるだろう。という見込みを付けて釣り場に訪れます。

私も過去数年間の傾向を基に、そろそろかな。と思う週末を狙って釣り場入りしました。

ですが、相手はやはり自然であり、野生の生物。人間の予想通りに行動してくれるわけではありません。

結論から言うと、今年もまた、私は最もへらぶな達が沢山釣れるピークの日を逃しました。

私のような、週末しか休みのない会社員ですと、平日に大量に釣れるピークの日が当たると、どうしてもタイミング良く釣行できないことが多いのです。

ですので、後々釣り仲間からの情報を聞くと、釣果に恵まれ良い思いをしたという話は、既に会社を定年退職して、平日いつでも釣りに来れるシニアのへら師のことが殆どです。

平日休めない会社員の私にとっては、何だか不公平感を感じてしまいますが、そのシニアの方々も、きっと私と同世代の頃は、同じ思いをしていたのでしょうから、あと数年間は、休日にピークの日が重なってくれるのを期待して我慢するしかないですね。

私が釣行した日は、生憎、へらぶなは1枚も釣れませんでした。

釣り場入りは午前4時を少し回った頃。夜明け前の空には月が出ています。

ヘッドランプを点灯しないと、辺りは真っ暗で何も見えません。他の釣り人に自分が入りたい場所に先に入られないよう、大げさな位早い時間に現場入りしました。

夜明け前の水神橋付近

野釣りの世界では、釣りをするポイントの確保は「早いもの勝ち」が暗黙の了解です。

いくら事前に自分で釣り場周辺を整備していたとしても、当日別の釣り人が自分より先にそのポイントに入っていれば、

その場所は自分が整えたんだからどいてくれ!

というのはマナー違反で、先に入った釣り人がその場所を使う権利を持つのです。

この日、釣り座作りや道具、エサの準備をして、釣りを開始したのが5:04。

釣り開始時刻

この時刻、普通のへら浮きでは暗くてトップ(目盛り)が見えないため、トップがLEDで光る電気ウキという特別な浮きを使います。

電気浮き

東の空が白み始めました。

こんな薄暗がりの川で竿を出しているのは私一人です。

でも、この静まり返った幻想的な風景を独り占めできるのは、早起きをした私の特権です。

勿論魚が釣れればテンションが上がるのでしょうが、私はこの静寂のひとときの中に身を置いているだけでもそこはかとない幸福を感じます。

亀成川の夜明け

ほんの20分の間に、景色の色合いがこのように移り変わります。

鏡のような水面に映り込む雲。対岸の枯れた葦も次第に姿を現してきます。

水面の色の変化

更に20分ほど経過。日の出の時刻です。

この温かい橙色の光と、樹木のシルエットが何とも言えない美しさです。

しばし、釣りをするのを忘れてこの光景に見入ってしまいました。

亀成川の日の出

このように、無風で晴天の日の朝は、放射冷却で気温が低下します。

釣り道具を入れて来たバッグにも霜が降りていました。

日の出直後よりも少し時間が経過した、朝7時頃に最低気温を記録することが多いです。

釣り台用バックに霜が降りる

ここまで冷え込んでしまうと、水温も低下していますので、へらぶな達の活性が下がってしまいます。

案の定、この日は水が冷たく、ハタキは有りませんでした。

周囲も十分明るくなってきたため、ここで昼間用の浮きに交換です。

長さは、この浮きの場合約36cmあります。結構長いですよね。

昼間用浮き

シーンと静まり返った水面に微動だにしないへら浮きのトップ。

エサを何度も打ち返し、アタリを待つも、この日浮きが動くことはありませんでした。

釣れない時間、釣り人は何を考えているのか?

それにしても、あなたは釣り人の姿を見かけた時、釣れない時間に何を考えているのだろう?と疑問に思ったことはありませんか?

ただぼーっと浮きを眺めて、暇そうだなぁ。

と思ったかもしれませんが、実際はそんなに暇ではありません。

勿論、暇にしたければ、何もしないであなたが考えているように、ただぼーっとすることは可能です。

ですが、大抵のへら師達は、何もしていないように見える時間も、頭の中は結構忙しい状態になっていると思います。

私の例で言いますと、

・川の中の目標の位置にエサを投入する際、自分の狙い通りの地点に着水するように竿の振り方を調整します。

・エサが着水してから浮きが立ち、トップ(色分けされている目盛り)が水中に何節入って行くかを見ながら、その間に魚の気配が出ていないか確認します。

・エサが目的の水中の深さまで入り静止したら、頭の中で秒数を数えます。エサの打ち始めは30秒~1分、10投ほど打ったら、その後は1~2分。その間、浮きの動きが無ければ仕掛けを回収し、エサ付けをします。

・エサを丸めてハリに付ける時も、エサの手触り、大きさ、形、をどうするか枚投考えて変化をつけています。

・浮きの周囲の水面に小さな気泡(泡づけと言います)が出ていないか確認しています(この泡づけは、魚がエサの近くに寄ってきている時に、魚の呼吸により発生するものです)。

他にももっと色々なことを考えていますが、ざっと並べただけでも上のようなことを常に考えていますので、一見傍から見るとただじっとしているように見えても、実は様々な作業を行っているのです。

ですので、私は釣りをしている時は全く暇ではありませんし、数時間この作業を行えば、当然頭や目、指先も疲れてきます。

水面に立つへら浮き

流れを変えるための床休め

ずっと座りっぱなしは腰に悪いので、ちょっと体を動かすために釣り座を離れます。

また、エサを何度も打ち込んでいると、川底の同じ場所にエサが蓄積されるため、一旦エサ打ちをやめて数分~数十分ほどそのままにしておくと(床休めと言います)、次にエサを打った時にアタリが出ることがあります。

自分の釣り座を少し離れた場所から俯瞰してみます。

釣りをしている時は、自分の前方しか見ていませんので、視野が狭まっています

ですが、このように少し離れた場所から全体を見渡すと、川のより広い範囲の様子をうかがうことができます

これは、日々の仕事や生活についても同様ですね。

目の前の事だけを見ていると視野が狭くなって見落としがちのことも、物事を俯瞰してみることで新たな気付きを得ることがあります。

この日は、広範囲で川面の様子、対岸の葦際の様子を確認しましたが、魚の気配はありませんでした。

敗色濃厚です。

釣り座を俯瞰する

でも、野釣りではこのような状況は珍しいことではありません。

魚を飼育している管理釣り場とは異なり、自然に生息している魚達ですから、その日のコンディションによって、魚がそこに居ないこともあります。

そんな時は、やけになってもどうしようもありません。

素直にこの状況を受け入れ、次の機会を待つか、魚がいる場所を求めて移動する、という選択肢をとることになります。

でも、魚は釣れなくても、こんな美しい風景が心を癒してくれます。

亀成川の全景

癒しの風景をしばし眺めてから、釣り座に戻ります。

この時点でまだ朝6時を少し回ってばかりですから、日が高くなり気温が上がってくれば、へらぶな達が回遊してくるかもしれない、という期待を持って。

厳しい状況を予め想定し、変化に柔軟に対応する

へらパラソル

日が昇って日差しが出てくるかと思いきや、この日は早々に雲が空全体を覆いどんよりとしてきました。

そんな時の事も考え、私は野釣りにはいつも雨対策の道具を持参しています。

野釣りでは、天気予報、風予報などの情報に加え、自分が経験した季節ごとの気象変化などを基に、想像力を働かせてどのような状況変化があっても可能な限り快適に釣りを継続できるように、十分な準備をしておくことが大切です。

これはへらパラソルという大判の傘です。直径約210cmにもなりますので、傘の下に釣り台、道具やバッグ類一式を入れて雨をしのぎます。

雨降りの釣り場

残念な雨と嬉しい雨

とうとう雨が降り出してしまいました。

あんなに美しい朝焼けがうそのようです。

皆さんがお出かけをする際、雨模様だと気分が下がりますよね?

ですが、釣りの場合、雨は必ずしも悪いことばかりではありません。

雨には、残念な雨と嬉しい雨の2種類があります。

残念な雨

残念な雨は、冷たい雨です。

冷たい雨が降ることで水温が下がってしまうと、へらぶな達の活性が下がり、釣果が悪くなることが多いです。特に春先の乗っ込み期に冷たい雨が降ると、ハタキの時期が遅れたり、アタリが出ないことがあります。

嬉しい雨

一方、嬉しい雨と言うのは、温かい雨です。

温暖前線の影響でしとしとと温かい雨が降るような場合は、水温も上がりますし、へらぶな達の活性も上がります。

春先にずっと晴天が続いている場合、そこでひと雨(温かい雨)があると、それを境にへらぶなが良く釣れることがあります。

今回の雨は、生憎、「残念な雨」の方でした。

竿を持つ手がかじかむほど冷たい雨で、更には川の水の色もどんどん透明度が上がってしまいました。

川の水の透明度

川の水はある程度の濁りがあった方が、へらぶな達の警戒心が弱まるので好都合なのですが、水の透明度が上がるとその逆で川底まで丸見えになってしまうので、魚が近くに寄ってこなくなってしまいます。

この日は色々と残念な条件が重なってしまったようです。

流石にこのまま釣りを続けていても、魚の姿を見ることはできないだろうと判断し、釣り場(川)を移動することにしました。

印旛新川じゃかご

こちらは先ほどとは違い、大分川幅の広い川です。

この川も私の自宅から近所にあります。

へらぶな釣り場に近い場所に住めていることは幸せです。

印旛新川じゃかご2

こんなに大きな川ですが、釣れてきたのはこんなにかわいいサイズのクチボソ。

小さな口ですが、エサ取りの名人で、へらぶな釣りでは悩ませられる魚の一種。

クチボソ

辛うじてマブナが釣れましたが、へらぶなは釣れませんでした。

マブナ

振り返り、反省を活かして次につなげる

へらぶなは釣れませんでしたが、元気な魚達に遊んでもらえました。

へらぶな釣りをする場合、それ以外の魚種のことを少々して、外道(げどう)と言います。

寒い時期には、へらぶなはおろか、外道すら全く釣れない、オデコ(釣果0匹のこと)の日も普通にあります。

それでもへら師達は、もう辞めた。などとは決して言いません。

釣れなかった日の終わりには、「さて、次はどうしたら魚が釣れるか?」と、既に次の釣行の戦略を練り始めているのです。

釣れた時の喜びを知っているから、釣れない時の釣りを振り返り、反省を活かして次につなげる。

これは、釣りだけでなく、人生においても通じるものではないでしょうか?

努力した結果得られた成功経験、それを知っているから、一度失敗しても、反省を活かして次は成功出来るようにやり方を変えてみる。

野のへらぶな釣りには、人生に活かせる教訓が詰まっています。

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