近年、職場やニュースなどで、
「心理的安全性」
という言葉を耳にしたことはありませんか?
知り合いの方との話の中で、心理的安全性について最近話題の本があると教えて頂きました。
タイトルは、「心理的安全性 最強の教科書」。
著者は、元Googleのアジア・パシフィック人財・組織開発責任者を務めた、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏です。
この本は、同氏が20年間、日本で働いた経験を基に、日本のビジネスパーソン、特にマネージャー層向けに書き下ろしたものです。
Googleと言えば、「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれる社内調査で、
心理的安全性の高いチームは
- 離職率が低い
- 他のメンバーが提案した多様なアイデアの活用が上手い
- マネージャーから評価される機会が約2倍
- 収益性も高い
という分析結果を発表したことで知られています。
心理的安全性という言葉は、私の在籍する会社の中で、ちょっと前までは最も縁遠い存在でした。
このため、どんなことが書かれているのが非常に関心がありました。
心理的安全性とは?
心理的安全性とは、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン氏が最初に提唱した概念です。
「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」
と定義されています。
ピョートル氏は以下のように解釈しています。
「メンバーがネガティブなプレッシャーを受けずに自分らしくいられる状態」「お互いに高め合える関係を持って、建設的な意見の対立が奨励されること」
ピョートル・フェリクス・グジバチ「心理的安全性 最強の教科書」
ネガティブなプレッシャーとは、
不当な目標を与えられたり、理不尽な評価をされたりすること、人格を否定する言動
を指します。
中間管理職にも必要な心理的安全性
あなたは、心理的安全性を高めるのは経営陣や管理職の仕事、と思いますか?
若手や管理職以外の方は、
「自分達は立場的に弱者で被害者なんだから、役員や管理職がそういう環境を作るのが当然じゃないか!」
と思っている方も多いかも知れません。ですが、中間管理職のあなたも、メンバーの一人なのです。
ピョートル氏は、こう言っています。
職場の心理的安全性とは、チームメンバーや若手社員だけが必要とするものではない。
ピョートル・フェリクス・グジバチ「心理的安全性 最強の教科書」
(中略)
職場の心理的安全性は、マネージャーの心理的安全性の有無に掛かっている、とも言える
中間管理職のあなたの心理的安全性が低ければ、結果的にチーム全体の心理的安全性も低くなるのです。
例えば、マネージャー(中間管理職)のあなたが配下のメンバーに対して、
「個々の持ち味を発揮できる環境を提供しよう」
と思っても、更に上の上司からは厳しく成果を求められる。
また、経営陣に対して提案したり、役員からの指示に対して問題があると気付き、意見を言おうとしても、
- こんな事を言ったら役員から怒られる
- 報復で評価を下げられてしまうかも知れない
という不安がある状態では、あなた自身の心理的安全性が確保出来ません。
私の会社でも、以前は経営層からの厳しいプレッシャーと責任の追及から、部長、マネージャー級の社員達が短期間に次々と退職してしまう時期がありました。
経営層と部下の間の板挟みになり、誰にも助けを求められず、会社を去るという選択肢しか取りようが無かったからだと思います。
野のへらぶな釣り現場で実感する心理的安全性
心理的安全性は、その定義を柔軟に解釈すると、会社や職場以外の環境にも通じる概念です。
私が最も熱量の上がる、大好きな野のへらぶな釣りでも、心理的安全性が確保されていることはとても重要です。
へら師(釣り人達の間でへらぶな釣りをする人を指す言い方)の仲間達の間で、個人個人が自分の意見や考えを(お互いを尊重する前提の上で)気兼ねせず自由に話せ、否定されたり仲間外れにされない。
という心理的安全性がなければ、情報交換によって釣りの技術の向上や釣り場の特徴、その釣り場にいる魚のくせなどを知ることができません。
嫌な思いをさせられた相手とは釣りを楽しむこともできません。
私や釣り仲間の実体験でも、それが原因で、ずっと通っていた馴染みの釣り場から足が遠のいてしまうこともありました。
中間管理職だって弱音を吐いていい
最近は、管理職になりたくない若手社員達が増えていると聞きますが、自分達の上司の悲惨な姿を見て、
「自分も管理職になるとこんな扱いを受けるかもしれない。」
という嫌悪感からなのかもしれません。
真面目な中間管理職のあなたは、
「自分がしっかりしなければ」
とか、
「部下の前で恰好悪い姿は見せられない!」
と、勝手にハードルを上げて、一人で自分を追い込んでしまいがちです。
ですが、私はこう思います。
「マネージャーだって弱みも見せていい。」
マネージャーだって、
「これは苦手」「助けて欲しい」
といった弱音を吐いていい、と。
むしろ、恰好いいことばかり言っていたり、完璧主義、ポーカーフェースで何を考えているか分からないマネージャーでは
メンバー達は近寄りがたく、安易に相談も持ち掛けられず、
「自分もあんな風にならなければいけない」
と思い、弱みや失敗を口にすることができなくなる恐れがあります。
つまり、中間管理職のあなたが理想とする、メンバーの心理的安全性が確保できない状態に陥ってしまうということです。
むしろ、完璧でない、人間味のあるマネージャーだからこそ、メンバー達もこのマネージャーと一緒に、チームの一員として、自分は何を出来るか?
と考え、自分の意見を言いやすい環境ができるのではないかと思います。
あなたは部下よりも優れている必要はありません。
鎧を脱ぎ捨て、何でも一人で解決しようとせず、優秀なメンバー達の力を借りては如何でしょうか?